ビタミンCと聞いて、多くの人が思い浮かべるのは「風邪予防」や「美肌効果」ではないでしょうか。確かにこれらは事実ですが、ビタミンCの働きはそれだけではありません。ビタミンCは、私たちの体の中で驚くほど多彩な役割を果たしている、まさに「万能選手」のような栄養素なのです。
ビタミンC(アスコルビン酸)は、強力な抗酸化物質として細胞を酸化ストレスから守り、コラーゲン合成に不可欠な補酵素として血管や骨を丈夫にし、免疫細胞を活性化して感染症と戦います。さらに、鉄の吸収を3-4倍に高めたり、神経伝達物質の合成を助けたり、発がん物質を無毒化したりと、その働きは体のあらゆる部分に及びます。
しかし、ビタミンCは水溶性で体内に貯蔵できないため、毎日コンスタントに摂取する必要があります。また、熱や光、酸素に弱く、調理や保存方法によって簡単に失われてしまいます。この記事では、ビタミンCの3つの主要な役割(抗酸化・コラーゲン合成・免疫)を分子レベルから詳しく解説し、効果的な摂取方法と調理の工夫についてもお伝えします。
ビタミンCとは何か
アスコルビン酸の構造
ビタミンCの化学名は「L-アスコルビン酸(L-ascorbic acid)」です。「アスコルビン酸」という名前は、「壊血病(scurvy)を防ぐ(anti-scurvy)酸」という意味から来ています。18世紀の船乗りたちが長い航海中に壊血病で苦しんだ歴史から、ビタミンCの重要性が発見されました。
ビタミンCの分子式はC₆H₈O₆で、グルコース(C₆H₁₂O₆)と非常に似た構造をしています。実際、多くの動物は体内でグルコースからビタミンCを合成できますが、人間、サル、モルモットなどは、合成に必要な酵素(L-グロノラクトンオキシダーゼ)を持っていないため、食事から摂取しなければなりません。
ビタミンCの分子構造には、2つの水酸基(-OH)があり、これが「電子を供与する」能力の源です。つまり、ビタミンCは自分の電子を他の物質に渡すことで、その物質を「還元(元に戻す)」できるのです。この性質が、抗酸化作用の基盤となっています。
水溶性ビタミンの特徴
ビタミンCは水溶性ビタミンです。水溶性ビタミンには、以下の特徴があります。
- 体内に貯蔵できない:過剰に摂取しても、余った分は尿中に排泄されます。そのため、毎日摂取する必要があります
- 水に溶ける:野菜を茹でたり、水にさらしたりすると、ビタミンCが水に溶け出してしまいます
- 熱に弱い:加熱調理によって分解されやすくなります
- 光や酸素で分解:カットした野菜や果物を長時間置いておくと、ビタミンCが酸化されて失われます
このような性質から、ビタミンCは「新鮮な野菜や果物を生で食べる」ことで最も効率よく摂取できます。
ビタミンCの推奨摂取量
日本人の食事摂取基準(2025年版)では、成人のビタミンC推奨量は以下の通りです。
| 年齢・性別 | 推奨量(mg/日) |
|---|---|
| 成人男性(18-64歳) | 100 |
| 成人女性(18-64歳) | 100 |
| 妊婦(付加量) | +10 |
| 授乳婦(付加量) | +50 |
ただし、以下のような人はより多くのビタミンCが必要です。
- 喫煙者:タバコ1本で約25mgのビタミンCが消費されるため、非喫煙者より35mg/日多く必要
- ストレスが多い人:ストレスホルモン(コルチゾール)の合成にビタミンCが使われる
- 激しい運動をする人:運動により活性酸素が増加し、抗酸化のためにビタミンCが消費される
- 風邪や感染症の人:免疫細胞がビタミンCを大量に消費する
役割①:抗酸化作用で細胞を守る
活性酸素とは何か
私たちの体は、酸素を使ってエネルギー(ATP)を作り出していますが、その過程で「活性酸素」という副産物が生まれます。活性酸素は非常に反応性が高く、細胞の膜(脂質)、DNA、タンパク質を酸化(損傷)させてしまいます。
活性酸素には、以下のような種類があります。
- スーパーオキシドアニオン(O₂⁻):ミトコンドリアの電子伝達系で発生
- 過酸化水素(H₂O₂):スーパーオキシドから生成
- ヒドロキシラジカル(•OH):最も反応性が高く、危険
- 一重項酸素(¹O₂):紫外線によって皮膚で発生
適量の活性酸素は、細菌やウイルスを攻撃する免疫機能として重要ですが、過剰になると「酸化ストレス」となり、老化、がん、動脈硬化、糖尿病などの原因になります。
ビタミンCの抗酸化メカニズム
ビタミンCは、活性酸素に電子を供与することで、活性酸素を無害化します。この反応は以下のように進みます。
- ビタミンC(還元型)が電子を供与:アスコルビン酸 → アスコルビルラジカル + H⁺ + e⁻
- 活性酸素が電子を受け取る:活性酸素 + e⁻ → 無害な物質
- ビタミンCは酸化型になる:アスコルビルラジカル → デヒドロアスコルビン酸
興味深いことに、ビタミンC自身が酸化されてできる「アスコルビルラジカル」や「デヒドロアスコルビン酸」は、比較的安定しており、他の分子を傷つけません。つまり、ビタミンCは「自己犠牲」によって細胞を守る「ボディガード」のような存在なのです。
ビタミンEとの協調作用
ビタミンCは水溶性なので、細胞の外(血液やリンパ液)や細胞質で働きます。一方、ビタミンEは脂溶性なので、細胞膜(脂質二重層)で働きます。この2つのビタミンは、連携して細胞を守っています。
具体的には、以下のように協力します。
- ビタミンEが細胞膜の脂質過酸化を防ぐ:脂質ラジカル + ビタミンE → 脂質(安定)+ ビタミンEラジカル
- ビタミンCがビタミンEを再生する:ビタミンEラジカル + ビタミンC → ビタミンE(還元型)+ ビタミンCラジカル
つまり、ビタミンCは「ビタミンEの充電器」のような役割も果たしています。この協調作用によって、少量のビタミンEで大きな抗酸化効果が得られます。
DNAとタンパク質の保護
ビタミンCは、DNAの酸化損傷も防ぎます。活性酸素がDNAを攻撃すると、塩基の変異や二重鎖切断が起こり、がんの原因になります。ビタミンCは、活性酸素を事前に中和することで、DNAを保護します。
研究では、ビタミンCの摂取量が多い人ほど、DNAの酸化マーカー(8-OHdG)が低いことが示されています。つまり、ビタミンCはがん予防にも貢献しているのです。
抗酸化酵素のサポート
体内には、活性酸素を分解する酵素(抗酸化酵素)も存在します。主なものは以下の通りです。
- SOD(スーパーオキシドディスムターゼ):スーパーオキシド → 過酸化水素
- カタラーゼ:過酸化水素 → 水 + 酸素
- グルタチオンペルオキシダーゼ:過酸化水素 → 水(グルタチオンを使用)
ビタミンCは、これらの酵素が働きやすい環境を整え、また酸化されたグルタチオンを還元する手助けもします。つまり、ビタミンCは「単独の抗酸化物質」ではなく、「抗酸化システム全体のサポート役」でもあるのです。
役割②:コラーゲン合成に不可欠
コラーゲンとは何か
コラーゲンは、体内で最も豊富なタンパク質で、全タンパク質の約30%を占めます。コラーゲンは、皮膚、骨、軟骨、血管、腱、歯などを構成し、これらの組織に強度と弾力性を与えています。
コラーゲンの構造は、3本のポリペプチド鎖が「三重らせん」を形成しています。この構造により、コラーゲンは引っ張りに強く、組織をしっかりと支えることができます。まるで「鉄筋コンクリートの鉄筋」のような役割です。
ビタミンCがないとコラーゲンが作れない
コラーゲンの合成には、複数の段階がありますが、その中でビタミンCが絶対に必要な反応があります。それが「プロリンとリジンの水酸化」です。
コラーゲンのアミノ酸配列には、プロリンとリジンが多く含まれています。これらのアミノ酸は、「水酸化(-OH基を付加)」されることで、コラーゲン分子同士がしっかりと結合できるようになります。
この水酸化反応は、以下の酵素によって行われます。
- プロリルヒドロキシラーゼ:プロリン → ヒドロキシプロリン
- リジルヒドロキシラーゼ:リジン → ヒドロキシリジン
そして、これらの酵素が働くためには、ビタミンCが「補酵素」として必要なのです。ビタミンCがないと、酵素が機能せず、水酸化が起こらず、コラーゲンが正常に形成されません。
壊血病:ビタミンC不足の恐怖
ビタミンCが極度に不足すると、「壊血病(scurvy)」という病気が発症します。壊血病では、以下のような症状が現れます。
- 歯茎からの出血:歯茎のコラーゲンが弱くなり、毛細血管が破れる
- 皮下出血(あざ):血管のコラーゲンが弱くなり、出血しやすくなる
- 傷が治らない:新しいコラーゲンが作れず、組織の修復ができない
- 骨の脆弱化:骨のコラーゲンマトリックスが弱くなり、骨折しやすくなる
- 貧血:鉄の吸収が低下し、赤血球が作れなくなる
18世紀の大航海時代には、何ヶ月も新鮮な野菜や果物を食べられない船乗りたちが、次々と壊血病で命を落としました。1747年、イギリスの医師ジェームズ・リンドが、柑橘類を食べさせることで壊血病が予防できることを発見し、これがビタミンC発見の契機となりました。
美肌効果の科学的根拠
「ビタミンCは美肌に良い」とよく言われますが、これには科学的根拠があります。
- コラーゲン合成の促進:皮膚の真皮層は約70%がコラーゲンでできています。ビタミンCがコラーゲン合成を促進することで、肌のハリと弾力が保たれます
- メラニン生成の抑制:ビタミンCは、チロシナーゼという酵素を阻害し、メラニン(シミの原因)の生成を抑えます
- 抗酸化作用:紫外線によって発生する活性酸素を中和し、皮膚の老化を防ぎます
ただし、ビタミンCを経口摂取した場合、皮膚に届く量は限られています。そのため、化粧品として直接肌に塗る方が、美白効果は高いとされています。しかし、経口摂取も全身のコラーゲン合成を支えるため、内側からの美肌ケアとして重要です。
血管と骨の健康維持
コラーゲンは皮膚だけでなく、血管や骨にも不可欠です。
血管:血管壁の約40%はコラーゲンでできています。ビタミンCが不足すると、血管が脆くなり、出血しやすくなります。また、動脈硬化の予防にも重要です。研究では、ビタミンCの摂取量が多い人ほど、心血管疾患のリスクが低いことが示されています。
骨:骨の約30%はコラーゲンでできており、カルシウムなどのミネラルを結びつける「骨格」の役割を果たしています。ビタミンCが不足すると、骨が脆くなり、骨折しやすくなります。高齢者では、ビタミンCの摂取が骨密度の維持に重要です。
役割③:免疫システムを強化する
白血球の機能を高める
ビタミンCは、免疫細胞(特に白血球)の機能を高めます。白血球には、好中球、リンパ球、マクロファージなどがあり、これらが細菌やウイルスと戦います。
ビタミンCが免疫を高めるメカニズムは以下の通りです。
- 白血球の活性化:ビタミンCは白血球の増殖と機能を促進します。特に、好中球の「貪食能(細菌を食べる能力)」と「殺菌能」を高めます
- インターフェロンの産生促進:インターフェロンは、ウイルス感染を防ぐタンパク質です。ビタミンCはインターフェロンの産生を促進します
- 白血球内のビタミンC濃度:白血球は、血液中のビタミンC濃度の約10-80倍も高い濃度でビタミンCを蓄えています。これは、免疫活動に大量のビタミンCが必要だからです
風邪とビタミンC
「ビタミンCは風邪を予防する」という説は、長年議論されてきました。大規模な研究をまとめたメタアナリシスでは、以下のことがわかっています。
- 一般的な風邪予防効果:一般人がビタミンCを毎日摂取しても、風邪の発症率はほとんど変わらない
- 特定の状況での予防効果:激しい運動をする人(マラソン選手、スキーヤーなど)では、ビタミンC(200mg/日以上)の摂取により、風邪の発症率が約50%減少する
- 症状の軽減と期間の短縮:風邪をひいた後にビタミンCを摂取すると、症状が軽くなり、回復が約8-14%早くなる
つまり、ビタミンCは「風邪を完全に防ぐ魔法の薬」ではありませんが、「免疫システムをサポートし、回復を助ける」効果はあるのです。
感染時のビタミンC消費
感染症にかかると、体内のビタミンC濃度は急激に低下します。これは、免疫細胞が活性酸素を大量に生成して病原体を攻撃する際、その活性酸素を中和するためにビタミンCが大量に消費されるからです。
研究では、重症感染症の患者では、血中ビタミンC濃度が通常の1/3-1/10に低下することが示されています。そのため、感染症の治療では、ビタミンCの補給が重要です。
抗体産生の促進
ビタミンCは、B細胞(リンパ球の一種)による抗体産生も促進します。抗体は、特定の病原体を認識して無力化するタンパク質で、「獲得免疫」の中心的な役割を果たします。
ビタミンCが十分にあると、B細胞が活性化され、抗体がより多く産生されます。これにより、感染症への抵抗力が高まります。
その他の重要な働き
鉄の吸収を促進
ビタミンCは、植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」の吸収を大幅に高めます。非ヘム鉄は、そのままでは吸収率が2-10%と低いのですが、ビタミンCと一緒に摂取すると、吸収率が3-4倍に増加します。
メカニズムは以下の通りです。
- 鉄をFe³⁺からFe²⁺に還元:非ヘム鉄は通常Fe³⁺(三価鉄)の形ですが、吸収されるにはFe²⁺(二価鉄)に還元される必要があります。ビタミンCは電子を供与して、この還元を促進します
- 鉄-ビタミンC複合体の形成:ビタミンCは鉄と結合して、水に溶けやすい複合体を作ります。これにより、小腸での吸収が促進されます
- 鉄の沈殿防止:アルカリ性環境(小腸)では、鉄が沈殿しやすいのですが、ビタミンCが酸性環境を作ることで、鉄が溶解状態を保ちます
貧血予防のためには、鉄分の豊富な食品(ほうれん草、豆類、レバー)とビタミンCの豊富な食品(ピーマン、ブロッコリー、柑橘類)を一緒に摂ることが効果的です。
カルニチン合成
カルニチンは、脂肪酸をミトコンドリア内に運び込む「運搬車」の役割を果たす物質です。脂肪をエネルギーに変えるためには、カルニチンが不可欠です。
カルニチンは、リジンとメチオニンという2つのアミノ酸から体内で合成されますが、この合成過程でビタミンCが補酵素として必要です。ビタミンCが不足すると、カルニチンの合成が低下し、脂肪の代謝が悪くなり、疲労感が増します。
神経伝達物質の合成
ビタミンCは、カテコールアミン系の神経伝達物質(ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリン)の合成にも関与します。
具体的には、以下の反応でビタミンCが必要です。
- ドーパミン → ノルアドレナリン:ドーパミンβヒドロキシラーゼという酵素が働きますが、この酵素の補酵素としてビタミンCが必要
ノルアドレナリンとアドレナリンは、ストレス対応、集中力、気分の調節に重要な役割を果たします。ビタミンC不足では、これらの神経伝達物質が不足し、うつ症状や疲労感が現れることがあります。
発がん物質の無毒化
ビタミンCは、ニトロソアミンという発がん物質の生成を抑制します。ニトロソアミンは、亜硝酸塩(加工肉などに含まれる保存料)とアミン(タンパク質の分解産物)が胃の中で反応して生成されます。
ビタミンCは、この反応を阻害することで、ニトロソアミンの生成を防ぎます。研究では、ビタミンCの摂取が胃がんのリスクを低下させることが示されています。
ビタミンCの吸収と代謝
小腸での吸収
ビタミンCは、小腸(特に空腸)で吸収されます。吸収には2つの経路があります。
- 能動輸送(低濃度時):ナトリウム依存性ビタミンCトランスポーター(SVCT1)によって、エネルギーを使って吸収されます。この経路は、ビタミンC濃度が低いときに働きます
- 受動拡散(高濃度時):ビタミンC濃度が高いときは、濃度勾配に従って受動的に吸収されます
吸収率は、摂取量によって変わります。
| 摂取量 | 吸収率 |
|---|---|
| 30-180mg | 70-90% |
| 1,000mg | 約50% |
| 1,500mg以上 | 50%以下 |
つまり、大量に摂取しても、吸収率が下がるため、あまり意味がありません。少量ずつ、1日数回に分けて摂取する方が効率的です。
血中濃度の維持
ビタミンCの血中濃度は、厳密に調節されています。健康な成人では、血中濃度は約0.5-1.5mg/dLに保たれます。この濃度を維持するためには、1日約100-200mgの摂取が必要です。
ビタミンCは、腎臓で再吸収されますが、血中濃度が約1.5mg/dLを超えると、再吸収されずに尿中に排泄されます。そのため、大量に摂取しても、血中濃度は頭打ちになります。
組織への蓄積
ビタミンCは、組織によって蓄積量が異なります。
| 組織 | ビタミンC濃度(血中の何倍) |
|---|---|
| 副腎 | 約30-40倍 |
| 脳下垂体 | 約30倍 |
| 白血球 | 約10-80倍 |
| 目(水晶体、網膜) | 約20倍 |
| 肝臓 | 約10倍 |
副腎にビタミンCが多いのは、ストレスホルモン(コルチゾール、アドレナリン)の合成に大量のビタミンCが必要だからです。白血球に多いのは、免疫機能のためです。
酸化と再利用
ビタミンCが抗酸化作用を発揮すると、以下のように変化します。
- アスコルビン酸(還元型) → 電子を供与 → アスコルビルラジカル
- アスコルビルラジカル → さらに電子を失う → デヒドロアスコルビン酸(酸化型)
デヒドロアスコルビン酸は、グルタチオンやNADPHなどの還元物質によって、再びアスコルビン酸に戻されます。つまり、ビタミンCは「リサイクル」されて、何度も使われるのです。
ただし、デヒドロアスコルビン酸が長時間放置されると、不可逆的に分解され、ビタミンC活性を失います。そのため、常に新しいビタミンCを補給することが重要です。
ビタミンCが豊富な食品
野菜
| 食品 | ビタミンC含有量(mg/100g) |
|---|---|
| 赤ピーマン(生) | 170 |
| 黄ピーマン(生) | 150 |
| ブロッコリー(生) | 140 |
| 芽キャベツ(ゆで) | 110 |
| カリフラワー(生) | 81 |
| ケール(生) | 76 |
| ほうれん草(生) | 60 |
ピーマンは、ビタミンCが最も豊富な野菜の1つです。赤ピーマン1個(約150g)で、1日の推奨量の2.5倍以上のビタミンCが摂取できます。
果物
| 食品 | ビタミンC含有量(mg/100g) |
|---|---|
| アセロラ(生) | 1,700 |
| グァバ(生) | 220 |
| キウイフルーツ(黄) | 140 |
| キウイフルーツ(緑) | 69 |
| いちご | 62 |
| オレンジ | 60 |
| レモン(果汁) | 50 |
| グレープフルーツ | 36 |
アセロラは、ビタミンCの含有量が圧倒的に多い果物です。ただし、日本では生のアセロラは手に入りにくいため、キウイフルーツやいちごが現実的な選択肢です。
その他
- 焼きのり:210mg/100g(ただし、1食分は3g程度なので6mg)
- 緑茶(煎茶):260mg/100g(茶葉)、19mg/100ml(淹れた茶)
- パセリ(生):120mg/100g
調理によるビタミンCの損失と保存方法
加熱による損失
ビタミンCは熱に弱く、加熱調理で大幅に失われます。
| 調理方法 | ビタミンC損失率 |
|---|---|
| 生(カット直後) | 0%(基準) |
| 茹でる(5-10分) | 30-50% |
| 蒸す(5-10分) | 15-30% |
| 炒める(5分) | 20-40% |
| 電子レンジ(3-5分) | 10-20% |
茹でると、ビタミンCが水に溶け出すため、損失が大きくなります。蒸す、電子レンジ、炒めるなど、水を使わない調理法の方が、ビタミンCの損失が少なくなります。
調理の工夫
- 短時間で加熱:加熱時間が長いほど、ビタミンCが分解されます。強火でサッと炒めるなど、短時間調理を心がけましょう
- 大きく切る:切断面が多いほど、ビタミンCが空気に触れて酸化されます。できるだけ大きく切るか、食べる直前に切りましょう
- 茹で汁も利用:茹でた場合は、茹で汁にビタミンCが溶け出しています。スープや煮物として、茹で汁も一緒に摂りましょう
- 酸を加える:レモン汁や酢を加えると、酸性環境でビタミンCが安定し、分解が抑えられます
- 金属製の調理器具を避ける:鉄や銅などの金属は、ビタミンCの酸化を促進します。ステンレスやガラス、セラミック製の調理器具を使いましょう
保存方法
ビタミンCは、保存中にも徐々に分解されます。
- 冷蔵保存:野菜や果物は、できるだけ早く冷蔵庫に入れましょう。常温保存では、ビタミンCが1日10-20%減少します
- カット後は密閉:カットした野菜や果物は、空気に触れないようラップで密閉し、冷蔵保存しましょう
- 光を避ける:光(特に紫外線)は、ビタミンCを分解します。透明な容器より、不透明な容器で保存しましょう
- 新鮮なうちに食べる:購入後、できるだけ早く食べることが、ビタミンCを最大限に摂取するコツです
サプリメントの活用
サプリメントの種類
ビタミンCのサプリメントには、いくつかの種類があります。
- アスコルビン酸:最も一般的で安価。酸性が強いため、胃が弱い人は注意
- アスコルビン酸ナトリウム:アスコルビン酸を中和したもの。胃に優しいが、ナトリウムを含むため、塩分制限中の人は注意
- エステル型ビタミンC(アスコルビン酸パルミチン酸エステル):脂溶性で、細胞膜に留まりやすい。吸収率は通常のビタミンCと同程度
- タイムリリース型:徐々に溶けるように設計され、血中濃度を長時間維持できる
サプリメントの効果的な摂り方
- 1日数回に分ける:1回に大量摂取しても、吸収率が下がります。1日2-3回、食後に摂取するのが効果的です
- 食後に摂取:空腹時より、食後の方が吸収率が高くなります
- ビタミンEと一緒に:ビタミンEと一緒に摂ると、相乗効果が得られます
過剰摂取のリスク
ビタミンCは水溶性なので、過剰に摂取しても尿中に排泄され、重大な副作用は少ないとされています。ただし、1日2,000mg以上の大量摂取では、以下のような副作用が報告されています。
- 下痢:腸内で浸透圧が高くなり、水分が引き込まれる
- 腹痛:消化管への刺激
- 吐き気
- 腎結石のリスク増加:ビタミンCの代謝産物であるシュウ酸が、カルシウムと結合して腎結石を形成する可能性(ただし、健康な人では稀)
日本人の食事摂取基準では、ビタミンCの耐容上限量は設定されていませんが、過剰摂取は推奨されません。1日1,000mg程度までが安全とされています。
よくある質問
ビタミンCは風邪を治しますか?
ビタミンCは風邪を「完全に治す」わけではありませんが、症状を軽減し、回復を早める効果があります。大規模研究では、ビタミンCを摂取すると、風邪の期間が成人で約8%、子供で約14%短縮されることが示されています。また、激しい運動をする人では、風邪の予防効果も認められています。
ビタミンCをたくさん摂れば美白効果がありますか?
経口摂取したビタミンCは、全身に分配されるため、皮膚に届く量は限られています。美白効果を期待するなら、ビタミンC配合の化粧品を直接肌に塗る方が効果的です。ただし、経口摂取も、コラーゲン合成や抗酸化作用を通じて、肌の健康を内側から支えるため、併用するのが理想的です。
喫煙者はビタミンCをもっと摂るべきですか?
はい。タバコ1本で約25mgのビタミンCが消費されるため、喫煙者は非喫煙者より35mg/日多く摂取する必要があります。タバコの煙に含まれる有害物質が活性酸素を発生させ、それを中和するためにビタミンCが大量に使われるからです。ただし、最も重要なのは禁煙です。
ビタミンCは熱に弱いと聞きましたが、温かいレモネードは効果がありますか?
温かいレモネード(約60-70℃)では、ビタミンCの一部は失われますが、完全になくなるわけではありません。約10-20%程度の損失です。冷たいレモネードの方がビタミンCは多く残りますが、温かい方が飲みやすい場合は、多少の損失を気にせず飲んで構いません。重要なのは、継続的に摂取することです。
ビタミンCのサプリメントと食品からの摂取、どちらが良いですか?
基本的には、食品からの摂取が推奨されます。食品には、ビタミンC以外にも、食物繊維、ポリフェノール、その他のビタミンやミネラルが含まれており、これらが相乗効果を発揮するからです。ただし、食事だけで十分な量を摂取できない場合や、特定の健康状態(感染症、手術後、激しい運動後)では、サプリメントの活用も有効です。
まとめ
ビタミンCは、抗酸化作用、コラーゲン合成、免疫強化という3つの主要な役割を担う多機能な栄養素です。抗酸化作用では活性酸素に電子を供与して細胞を保護し、ビタミンEと協調して細胞膜の脂質過酸化を防ぎます。コラーゲン合成ではプロリルヒドロキシラーゼとリジルヒドロキシラーゼの補酵素として必須で、皮膚、血管、骨の健康を維持します。免疫系では白血球の機能を高め、インターフェロン産生を促進し、感染症の予防と回復を助けます。さらに非ヘム鉄の吸収を3-4倍に高め、カルニチン合成、神経伝達物質合成、発がん物質の無毒化にも関与します。
推奨摂取量は成人で100mg/日ですが、喫煙者、ストレスが多い人、激しい運動をする人、感染症の人はより多く必要です。ビタミンCは水溶性で体内に貯蔵できないため毎日の摂取が重要です。赤ピーマン(170mg/100g)、ブロッコリー(140mg/100g)、キウイフルーツ(69-140mg/100g)、いちご(62mg/100g)などが豊富な供給源です。熱や水に弱いため、生食、短時間加熱、蒸し調理、電子レンジ調理が推奨され、カット後は密閉冷蔵保存し新鮮なうちに食べることで損失を最小限に抑えられます。サプリメントは1日数回に分けて食後に摂取すると吸収率が高まりますが、基本的には食品からの摂取が推奨されます。
次に読むと理解が深まる記事
- 消化と吸収の仕組み – ビタミンCが小腸で吸収される消化プロセス
参考文献
- 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版)
- Carr AC, Maggini S. Vitamin C and Immune Function. Nutrients, 2017
- Hemilä H, Chalker E. Vitamin C for preventing and treating the common cold. Cochrane Database Syst Rev, 2013
- Pullar JM, et al. The Roles of Vitamin C in Skin Health. Nutrients, 2017
