「ビタミンEは体に良い」と聞いたことがあっても、具体的にどの食品にどれくらい含まれているのか、どのように摂取すれば効率的に吸収されるのか、知っている人は少ないかもしれません。ビタミンEは、細胞膜を酸化から守る重要な抗酸化ビタミンですが、実は「脂溶性」という性質のため、摂取方法によって吸収率が大きく変わるのです。
ビタミンEが最も豊富に含まれているのは、アーモンドやヒマワリの種などのナッツ類、そして植物油(特にヒマワリ油、サフラワー油、小麦胚芽油)です。例えば、アーモンドを30g(約23粒)食べれば、1日の目安量の約7.0mgを満たすことができます。また、ヒマワリ油を大さじ1杯(約13g)使えば、約9.2mgものビタミンEが摂取できます。しかし、ビタミンEは脂溶性なので、油分と一緒に摂取しないと、ほとんど吸収されません。逆に、油と一緒に摂ることで、吸収率が大幅に向上します。
この記事では、ビタミンEが豊富な食品、効果的な摂取方法、調理や保存による損失、そしてサプリメントの選び方まで、実践的な情報を詳しく解説します。
ビタミンEが豊富な食品
ナッツ類・種実類
ナッツ類は、ビタミンEの最も優れた供給源です。
| 食品 | 1食分の量 | ビタミンE含有量(mgα-TE) | 1日の目安量に対する割合 |
|---|---|---|---|
| アーモンド(乾) | 30g(約23粒) | 9.3 | 155% |
| ヘーゼルナッツ | 30g(約20粒) | 5.1 | 85% |
| ヒマワリの種 | 30g | 12.0 | 200% |
| ピーナッツ(落花生) | 30g | 3.0 | 50% |
| カシューナッツ | 30g | 0.6 | 10% |
| クルミ | 30g | 0.4 | 7% |
※1日の目安量は成人男性6.0mg、成人女性5.5mgとして計算
アーモンドとヒマワリの種は、特にビタミンEが豊富です。毎日の間食として、一握り(約30g)のアーモンドを食べるだけで、1日の必要量を十分に満たすことができます。
植物油
植物油は、ビタミンEの重要な供給源です。ただし、油の種類によって含有量が大きく異なります。
| 植物油 | 1食分の量 | ビタミンE含有量(mgα-TE) | 1日の目安量に対する割合 |
|---|---|---|---|
| 小麦胚芽油 | 大さじ1杯(13g) | 16.9 | 282% |
| ヒマワリ油 | 大さじ1杯(13g) | 9.2 | 153% |
| サフラワー油(紅花油) | 大さじ1杯(13g) | 8.4 | 140% |
| 米油 | 大さじ1杯(13g) | 3.3 | 55% |
| オリーブ油 | 大さじ1杯(13g) | 1.2 | 20% |
| ごま油 | 大さじ1杯(13g) | 0.5 | 8% |
小麦胚芽油とヒマワリ油は、非常にビタミンEが豊富です。ただし、小麦胚芽油は風味が強いため、サラダドレッシングなどに少量使うのが一般的です。
魚介類
| 食品 | 1食分の量 | ビタミンE含有量(mgα-TE) |
|---|---|---|
| ウナギ(蒲焼) | 100g(1串) | 4.9 |
| タラコ | 50g | 3.6 |
| イクラ | 50g | 4.5 |
| ハマチ(刺身) | 100g | 4.0 |
| サバ(焼き) | 100g | 1.4 |
野菜・果物
| 食品 | 1食分の量 | ビタミンE含有量(mgα-TE) |
|---|---|---|
| カボチャ(茹で) | 100g | 4.9 |
| アボカド | 1個(140g可食部) | 4.6 |
| ホウレン草(茹で) | 100g | 2.6 |
| ブロッコリー(茹で) | 100g | 2.5 |
| キウイフルーツ | 1個(80g可食部) | 1.0 |
ビタミンEの吸収メカニズム
脂溶性ビタミンの特徴
ビタミンEは「脂溶性ビタミン」で、水に溶けず、油に溶ける性質を持っています。そのため、吸収には以下のステップが必要です。
- 食事中の脂質(油)と一緒に胃から十二指腸に入る
- 胆嚢から分泌される胆汁酸が、脂質を乳化(小さな粒子に分散)する
- 膵臓から分泌されるリパーゼが、中性脂肪を分解する
- ビタミンEが「ミセル」という小さな脂質の粒子に取り込まれる
- ミセルが小腸の上皮細胞(腸管細胞)に到達し、ビタミンEが吸収される
- 吸収されたビタミンEは、「カイロミクロン」というリポタンパク質に組み込まれる
- カイロミクロンがリンパ管を経由して血液中に入る
油と一緒に摂る重要性
研究では、ビタミンEを単独で摂取した場合の吸収率は10-20%程度ですが、脂質と一緒に摂取すると50-80%に向上することが示されています。
推奨される脂質の量:ビタミンEを効率的に吸収するには、少なくとも5-10gの脂質(油大さじ1杯弱)が必要です。
吸収率に影響する要因
| 要因 | 影響 |
|---|---|
| 食事中の脂質量 | 脂質が多いほど吸収率向上 |
| 胆汁分泌 | 胆汁が少ないと吸収低下 |
| 膵リパーゼ | 膵臓疾患で吸収低下 |
| 腸の健康状態 | クローン病などで吸収低下 |
| ビタミンEの形態 | 天然型(d-α)は合成型(dl-α)より吸収率高い |
効果的な摂取方法
方法1:ナッツを間食に
最も簡単な方法は、アーモンドやヒマワリの種を毎日の間食にすることです。
おすすめの量:
- アーモンド:1日20-25粒(約30g)
- ミックスナッツ:1日30-40g
注意点:
- ナッツはカロリーが高い(100gあたり約600kcal)ので、食べ過ぎに注意
- 塩分が添加されたものは避け、素焼きまたは生のものを選ぶ
方法2:植物油を料理に使う
サラダドレッシング、炒め物、揚げ物などで、ビタミンEが豊富な植物油を使いましょう。
おすすめの使い方:
- サラダ:ヒマワリ油やサフラワー油を使ったドレッシング
- 炒め物:米油またはヒマワリ油
- マリネ:オリーブ油にアーモンドスライスを加える
方法3:野菜を油で調理
緑黄色野菜(カボチャ、ホウレン草、ブロッコリー)は、ビタミンEを含むだけでなく、β-カロテンなどの脂溶性栄養素も豊富です。油で炒めることで、これらの栄養素の吸収率が向上します。
おすすめのレシピ:
- カボチャの素揚げまたは炒め物
- ホウレン草のガーリックソテー
- ブロッコリーのオリーブオイル和え
方法4:アボカドを活用
アボカドは、ビタミンEと良質な脂質の両方を含む優れた食品です。
おすすめの食べ方:
- アボカドトースト(全粒粉パン + アボカド + アーモンドスライス)
- アボカドサラダ(レタス、トマト、アボカド、ナッツ、ドレッシング)
- ワカモレ(アボカド + ライム + トマト + 玉ねぎ)
方法5:魚料理
ウナギ、タラコ、イクラなどの魚介類は、ビタミンEとオメガ3脂肪酸を同時に摂取できます。
注意点:
- オメガ3脂肪酸(EPA、DHA)は酸化されやすいため、ビタミンEの需要が増加します
- 魚油サプリメントを摂取する場合は、ビタミンEも一緒に摂ることが推奨されます
調理・保存による損失
加熱による損失
ビタミンEは、ビタミンCと比べて熱に比較的強いですが、高温での長時間加熱では分解されます。
| 調理方法 | ビタミンE残存率 |
|---|---|
| 生(無調理) | 100% |
| 茹でる(短時間) | 90-95% |
| 蒸す | 85-90% |
| 炒める(短時間) | 80-85% |
| 揚げる | 60-80% |
| 長時間加熱(煮込み) | 50-70% |
酸化による損失
ビタミンEは、酸素、光、金属イオン(鉄、銅)によって酸化されます。
保存のポイント:
- ナッツ類:密閉容器に入れ、冷暗所または冷蔵庫で保存
- 植物油:開封後は冷暗所で保存し、できるだけ早く使い切る(2-3ヶ月以内)
- 光を避ける:透明なガラス瓶より、遮光性のある容器が望ましい
揚げ油の再利用
揚げ油を繰り返し使うと、ビタミンEが消費され、同時に有害な酸化生成物(過酸化脂質)が増加します。
推奨:
- 揚げ油は2-3回の使用で交換する
- 揚げ物をした後は、油を濾して不純物を取り除く
- 酸化した油(色が濃くなる、粘りが出る、泡立ちやすくなる)は使用しない
サプリメントの選び方
天然型と合成型
| 種類 | 表示 | 特徴 | 活性 |
|---|---|---|---|
| 天然型 | d-α-トコフェロール RRR-α-トコフェロール |
1種類の立体異性体 体内で優先的に保持される |
高い(基準100%) |
| 合成型 | dl-α-トコフェロール all-rac-α-トコフェロール |
8種類の立体異性体の混合 1/8のみが活性 |
低い(約50%) |
天然型は、同じ重量でも合成型の約2倍の活性があります。例えば、天然型100IU = 合成型200IU相当です。
エステル型と遊離型
| 種類 | 化学名 | 特徴 |
|---|---|---|
| 遊離型 | α-トコフェロール | 吸収後すぐに活性 吸収に脂質が必要 |
| エステル型 | α-トコフェロール酢酸エステル α-トコフェロールコハク酸エステル |
酸化されにくく安定 腸管で加水分解されて吸収 吸収率は遊離型と同等 |
サプリメントでは、安定性の高いエステル型が一般的です。
推奨される摂取量
サプリメントからの推奨摂取量:
- 一般的な予防:100-400IU/日(6.7-26.7mg)
- 欠乏症の治療:400-800IU/日(医師の指導下)
注意:高用量(≥400IU/日、約267mg/日)の長期摂取は、死亡率をわずかに増加させる可能性が報告されています。食事から十分に摂取できている場合は、サプリメントの必要性は低いです。
摂取のタイミング
ビタミンEは脂溶性なので、食事と一緒に摂取することで吸収率が向上します。
おすすめ:
- 朝食または夕食の後
- 脂質を含む食事(肉、魚、卵、油を使った料理)と一緒
特別な状況での摂取
妊娠・授乳期
妊娠中・授乳中は、ビタミンEの需要が増加します。
| 時期 | 目安量(mgα-TE/日) |
|---|---|
| 妊娠初期・中期・後期 | 6.0(+0.5) |
| 授乳期 | 8.5(+3.0) |
授乳期には、母乳を通じて赤ちゃんにビタミンEを供給するため、特に摂取量を増やす必要があります。
高齢者
高齢者では、以下の理由でビタミンE不足のリスクが高まります。
- 食事摂取量の減少
- 脂肪吸収能力の低下
- 活性酸素の発生増加
目安量は、65歳以上で男性6.5mg、女性6.0mgです。
運動選手
激しい運動は、活性酸素の発生を増加させ、ビタミンEの需要を高めます。
推奨:
- 通常の目安量に加えて、100-200IU/日(6.7-13.4mg)の追加摂取
- ビタミンCとの併用が効果的
喫煙者
喫煙は活性酸素を大量に発生させ、ビタミンEの消費を増加させます。
推奨:
- 禁煙が最優先
- ビタミンEとビタミンCを食事から十分に摂取
- 高用量のβ-カロテンサプリメントは避ける(肺がんリスク増加)
よくある質問
ビタミンEオイルを肌に塗ると効果がありますか?
ビタミンEオイルは、皮膚に塗ることで抗酸化作用を発揮し、紫外線による酸化ストレスを軽減する可能性があります。また、保湿効果もあります。ただし、一部の人ではアレルギー反応(接触性皮膚炎)を起こすことがあるため、パッチテストを行ってから使用しましょう。経口摂取の方が全身的な効果は高いです。
ビタミンEとオメガ3の相性は?
オメガ3脂肪酸(EPA、DHA)は非常に酸化されやすいため、ビタミンEと一緒に摂取することが推奨されます。多くの魚油サプリメントには、酸化防止のためにビタミンEが添加されています。魚を頻繁に食べる場合や魚油サプリメントを摂る場合は、ビタミンEの摂取量を増やしましょう。
古いナッツは食べても大丈夫ですか?
古いナッツは、ビタミンEが酸化され、同時に不快な匂い(油臭さ、酸っぱい匂い)や苦味が出ます。これは「酸敗」と呼ばれる現象で、過酸化脂質が生成されています。過酸化脂質は、体内で細胞を傷つける可能性があるため、古いナッツは食べないようにしましょう。ナッツは開封後、密閉容器に入れて冷蔵庫で保存し、2-3ヶ月以内に消費することが推奨されます。
ビタミンEとビタミンKは一緒に摂っても大丈夫ですか?
通常の食事からの摂取では問題ありませんが、高用量のビタミンEサプリメント(≥400IU/日)は、ビタミンKの作用を阻害し、血液凝固を遅らせる可能性があります。特に、ワーファリンなどの抗凝固薬を服用している人は注意が必要です。医師に相談してください。
植物油は加熱すると体に悪いと聞きましたが?
植物油を高温で長時間加熱すると、酸化されて過酸化脂質やトランス脂肪酸が生成される可能性があります。ただし、適切な温度(180℃以下)で短時間調理する分には問題ありません。揚げ油の再利用を避け、新鮮な油を使うことが重要です。また、オリーブ油は加熱に比較的強く、炒め物にも適しています。
まとめ
ビタミンEはアーモンド30g(9.3mg)、ヒマワリ油大さじ1杯(9.2mg)、カボチャ100g(4.9mg)などナッツ類と植物油に豊富で、1日の目安量は成人男性6.0mg、女性5.5mgです。脂溶性ビタミンのため胆汁酸ミセルに取り込まれて腸管細胞から吸収され、カイロミクロンでリンパ管経由で血液に入ります。油と一緒に摂取すると吸収率が10-20%から50-80%に向上し、最低5-10gの脂質が必要です。効果的な摂取方法はアーモンド20-25粒を間食に、ヒマワリ油やサフラワー油を料理に使用、緑黄色野菜を油で炒める、アボカドを活用、魚料理でオメガ3と同時摂取などです。
加熱により揚げ物で60-80%、長時間煮込みで50-70%に減少し、酸化や光でも分解されるため、ナッツは密閉容器で冷暗所保存、植物油は開封後2-3ヶ月以内に使用、揚げ油は2-3回で交換が推奨されます。サプリメントは天然型(d-α-トコフェロール)が合成型(dl-α-トコフェロール)の約2倍の活性を持ち、一般的な予防には100-400IU/日ですが、高用量(≥400IU/日)の長期摂取は死亡率増加の可能性があります。妊娠初期は+0.5mg、授乳期は+3.0mgの付加量が必要で、高齢者、運動選手、喫煙者では需要が増加します。魚油サプリメントや魚を頻繁に食べる場合はオメガ3の酸化を防ぐためビタミンEを増やし、高用量ビタミンEサプリメントはビタミンKの作用を阻害して出血傾向を示すため抗凝固薬服用者は注意が必要です。
次に読むと理解が深まる記事
- ビタミンCの多彩な働き – ビタミンEとの相乗効果
- 消化と吸収の仕組み – 脂溶性ビタミンの吸収経路
参考文献
- 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版)
- 文部科学省. 日本食品標準成分表2020年版(八訂)
- Traber MG, Atkinson J. Vitamin E, antioxidant and nothing more. Free Radic Biol Med, 2007
- Brigelius-Flohé R, Traber MG. Vitamin E: function and metabolism. FASEB J, 1999
