ビタミンB2は体内でどうなる?
ビタミンB2(リボフラビン)は、食べ物をエネルギーに変換する際に必須の水溶性ビタミンです。体内でFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)とFMN(フラビンモノヌクレオチド)という補酵素に変換され、エネルギー代謝の中心的な役割を果たします。
TCAサイクル、電子伝達系、脂肪酸β酸化など、エネルギーを作り出すすべての経路でFADが必要です。また、皮膚や粘膜の健康維持、抗酸化作用にも関与します。欠乏すると口内炎、舌炎、疲労感、肌荒れなどが起こります。
この記事では、ビタミンB2がFAD・FMNに変換される仕組みと分子構造、エネルギー代謝(TCAサイクル、電子伝達系、脂肪酸β酸化)での具体的な働き、口内炎や疲労が起きる生化学的メカニズム、納豆・卵・牛乳からの効率的な摂取法と調理のコツを解説します。
化学構造と形態
分子構造
- 化学式:C₁₇H₂₀N₄O₆、分子量376.4 g/mol
- 基本構造:イソアロキサジン環(3つの環が融合)とリビトール(5炭糖アルコール)が結合
- 機能部位:イソアロキサジン環が酸化還元反応の中心(電子の受け渡し)
- 役割:この構造が「電子の運び屋」として機能し、エネルギー代謝を支える
体内での形態
食品中の形態:
- 遊離型リボフラビン:10%
- FAD(フラビンアデニンジヌクレオチド):70%
- FMN(フラビンモノヌクレオチド):20%
吸収後の形態変換:
- 食品中のFAD・FMN → 消化管でホスファターゼにより遊離型リボフラビンに変換
- 遊離型リボフラビンが小腸上皮細胞で吸収
- 細胞内で活性型に変換:
- 第1段階:リボフラビン + ATP → FMN + ADP(酵素:リボフラビンキナーゼ)
- 第2段階:FMN + ATP → FAD + PPi(酵素:FADシンターゼ)
最終的にFADとFMNが補酵素として機能します。
化学的性質
- 水溶性:親水性が高く、水に溶けやすい
- 光感受性:紫外線・可視光線で急速に分解(最大の弱点)
- 熱安定性:100℃に耐える(比較的安定)
- pH感受性:アルカリ性環境で分解加速、中性(pH 6-7)で最も安定
- 調理での損失:
- 光による分解:牛乳を日光に2時間で50%以上失われる
- 茹で汁への流出:20-40%
消化・吸収・代謝
消化過程
- タンパク質結合型リボフラビンは胃酸と消化酵素(ペプシン、トリプシン)で遊離
- FAD・FMNは小腸粘膜のホスファターゼで脱リン酸化され遊離型リボフラビンに変換
吸収メカニズム
- 吸収部位:小腸上部(十二指腸と空腸)
- 吸収率:
- 通常の食事摂取量(1-5 mg):60-65%
- 高用量(30 mg以上):15%以下に低下(飽和現象)
- 吸収促進因子:食事と一緒の摂取(胃酸分泌促進)
- 吸収阻害因子:
- アルコール(腸管吸収阻害)
- 抗生物質の長期使用
- 甲状腺機能低下症
体内輸送と分布
- 血中輸送:主にアルブミンと結合して輸送
- 血中濃度:10-30 ng/mL
- 組織分布:
- 肝臓:30%
- 腎臓:20%
- 心臓:15%
- 脳:10%
- 細胞内局在:
- ミトコンドリア:60%(TCAサイクル・電子伝達系)
- 細胞質:40%(脂肪酸代謝・アミノ酸代謝)
貯蔵と代謝
- 体内貯蔵量:総量1-2 mg(非常に少ない)
- 半減期:60-84日
- 貯蔵能力:非常に低く、毎日の摂取が必要
- 排泄経路:主に尿中排泄、過剰分は速やかに排泄
- 排泄のタイミング:
- 摂取後2-3時間でピーク
- 24時間以内に大部分が排泄
- 尿の黄色化:リボフラビンの色素による(無害)
生化学的機能
エネルギー代謝(TCAサイクル)
FADはTCAサイクルでコハク酸脱水素酵素の補酵素として機能します。つまり、この酵素がFADなしでは働かないため、ビタミンB2はエネルギー産生の必須要素です。
反応式:コハク酸 + FAD → フマル酸 + FADH₂
この反応でFADが水素を受け取りFADH₂になり、電子伝達系に送られて1.5 ATPを生成します。ビタミンB2がないとTCAサイクルが回らず、エネルギー産生が著しく低下します。具体的には、TCAサイクル1回転で生成される30-32 ATPのうち、約5%がこの反応に依存します。
電子伝達系
FADは電子伝達系で複合体II(コハク酸-CoQ還元酵素)の補酵素として機能します。FADH₂から電子を受け取り、コエンザイムQ(ユビキノン)に渡します。
この反応でプロトン勾配が形成され、ATP合成酵素がATPを生成します。1分子のFADH₂から約1.5 ATPが生成されます。簡単に言えば、FADは「電子の運び屋」として、食べ物のエネルギーをATP(細胞のエネルギー通貨)に変換する橋渡し役を果たします。
脂肪酸のβ酸化
FADは脂肪酸β酸化でアシルCoA脱水素酵素の補酵素として機能します。つまり、脂肪をエネルギーに変える最初のステップでFADが必須です。
反応式:アシルCoA + FAD → エノイルCoA + FADH₂
この反応がないと脂肪をエネルギー源として利用できません。特に長時間の運動や絶食時には、脂肪酸が主要なエネルギー源となるため、ビタミンB2が非常に重要です。1分子のパルミチン酸(C16脂肪酸)の完全酸化には、7回のβ酸化サイクルが必要で、7分子のFADが消費されます。
抗酸化作用
FADはグルタチオン還元酵素の補酵素として、抗酸化システムを支えます。
反応式:GSSG + NADPH + H⁺ → 2 GSH + NADP⁺(FADが補酵素)
還元型グルタチオン(GSH)は活性酸素を除去する主要な抗酸化物質です。ビタミンB2が不足すると抗酸化能力が低下し、酸化ストレスが増加します。簡単に言えば、ビタミンB2は体を「サビ」から守る防御システムの一部として働きます。
ビタミンB6の活性化
ピリドキサミン5′-リン酸オキシダーゼ(FMN依存酵素)が、ビタミンB6を活性型(PLP:ピリドキサール5′-リン酸)に変換します。つまり、ビタミンB2が不足すると、ビタミンB6を摂取しても活性型にならず、アミノ酸代謝や神経伝達物質の合成に支障をきたします。
ナイアシン合成
キヌレニンヒドロキシラーゼ(FAD依存酵素)が、トリプトファンからナイアシン(ビタミンB3)を合成する経路に関与します。ビタミンB2が不足すると、ナイアシン合成も低下し、エネルギー代謝がさらに悪化する悪循環が起こります。
アミノ酸代謝
D-アミノ酸オキシダーゼ(FAD依存酵素)が、D-アミノ酸を分解します。また、複数のアミノ酸脱水素酵素がFADを補酵素として利用し、アミノ酸の代謝に関与します。
プリン代謝
キサンチンオキシダーゼ(FAD依存酵素)が、プリン塩基の最終分解産物である尿酸を生成します。この酵素は、体内の老廃物処理に重要な役割を果たします。
欠乏症と過剰症
欠乏症
主な症状:
- 口角炎:口の端が切れて痛む
- 舌炎:舌が赤く腫れ、痛みを伴う
- 口内炎:口の中に炎症ができる
- 脂漏性皮膚炎:鼻の周りや額に脂っぽい湿疹
- 眼の症状:充血、光過敏、流涙、視力低下
- 貧血:赤血球の産生低下
- 成長障害:子供の成長遅延
- 疲労感:エネルギー代謝の低下による
分子メカニズム
粘膜の炎症:口腔や舌の粘膜は細胞の入れ替わりが速く(ターンオーバー3-7日)、エネルギー不足で新しい細胞が作られず、炎症が起こります。FAD不足により、TCAサイクルとβ酸化が低下し、細胞分裂に必要なATPが不足します。
皮膚炎:皮脂腺の機能が低下し、皮膚のバリア機能が弱まります。特に皮脂分泌が盛んな鼻周辺で症状が出やすくなります。FAD依存酵素である脂肪酸脱水素酵素の活性が低下し、皮脂の合成と代謝が障害されます。
眼の症状:角膜や結膜の細胞代謝が低下し、血管新生が起こります。光を感じる視細胞の機能低下により、光に敏感になります。眼は代謝活性が非常に高い組織であり、FAD不足の影響を受けやすい器官です。
貧血:赤血球の産生には活発な細胞分裂が必要ですが、FAD不足によりエネルギーが不足し、赤血球の産生が低下します。骨髄での赤血球前駆細胞の増殖が抑制され、貧血が起こります。
疲労感:TCAサイクルと電子伝達系でのATP産生が低下し、全身のエネルギー不足が起こります。特に筋肉や脳など、エネルギー需要が高い組織で疲労感が顕著になります。
欠乏のリスク因子
- アルコール多飲
- 妊娠・授乳期(需要増加)
- 高齢者(吸収率低下)
- 激しい運動をする人(消費量増加)
過剰症
ビタミンB2は水溶性のため通常は過剰症はありません。腸管での吸収に上限があり、過剰分は速やかに尿中に排泄されます。耐容上限量は設定されていません。高用量摂取(400 mg/日以上)でも重篤な副作用は報告されていません。尿が黄色くなることがありますが、無害です。
必要量と補給
推奨摂取量
| 対象 | 推奨量(mg/日) |
|---|---|
| 成人男性(18-64歳) | 1.6 |
| 成人男性(65-74歳) | 1.5 |
| 成人男性(75歳以上) | 1.3 |
| 成人女性(18-64歳) | 1.2 |
| 成人女性(65-74歳) | 1.2 |
| 成人女性(75歳以上) | 1.0 |
| 妊婦(付加量) | +0.3 |
| 授乳婦(付加量) | +0.6 |
需要が増加する状況
- 激しい運動をする人(エネルギー代謝の亢進)
- 成長期の子供(細胞分裂の亢進)
- 妊娠・授乳期(胎児・乳児への供給)
- 感染症・発熱(代謝亢進)
- ストレス(コルチゾール分泌によるエネルギー需要増加)
- アルコール多飲(吸収阻害と消費増加)
- 甲状腺機能亢進症(基礎代謝の亢進)
サプリメント
形態:
- リボフラビン:最も一般的、水溶性
- リボフラビン5′-リン酸ナトリウム:FMNの形態、吸収率が高い
推奨摂取量:
- 予防的補給:5-10 mg/日
- 欠乏症の治療:10-30 mg/日(医師の指導下)
注意点:
- 食事と一緒に摂取すると吸収率向上
- ビタミンB群複合体(Bコンプレックス)での摂取が理想的
- 光に弱いため遮光容器で保存
食品源
主な食品源
| 食品名 | 含有量(100gあたり) | 1日必要量に対する割合(男性1.6mg基準) |
|---|---|---|
| 豚レバー | 3.60 mg | 225% |
| 牛レバー | 3.00 mg | 188% |
| 鶏レバー | 1.80 mg | 113% |
| 納豆 | 0.56 mg | 35% |
| 卵(1個50g) | 0.43 mg | 27% |
| 牛乳(200ml) | 0.30 mg | 19% |
| ヨーグルト | 0.14 mg | 9% |
| ほうれん草 | 0.20 mg | 13% |
| ブロッコリー | 0.20 mg | 13% |
| アーモンド | 0.92 mg | 58% |
効率的な摂取のポイント
- レバー:週1-2回食べる(50gで1日分以上)
- 納豆:1パック(50g)で約30%摂取
- 牛乳・ヨーグルト:200mlで約20%確保
- 卵:1日1個で約25%摂取
- 光を避けて保存:牛乳は紙パックが理想
- 茹で汁も利用:スープ、煮汁として活用
- 短時間加熱:損失最小化
- 重曹は使わない:アルカリ性で分解
→ 詳しい調理法は:「調理003 – 脂溶性栄養素を守る調理法」で具体的なテクニックを解説しています。
他の栄養素との相互作用
協調する栄養素
ビタミンB1(チアミン):ビタミンB2がチアミンからTPPへの変換に必要な酵素の補酵素FADとして機能します。B2が不足すると、B1を摂取してもTPPに変換されず活性型にならないため、両者は協働して作用します。
ビタミンB3(ナイアシン):FADが関与するエネルギー代謝酵素は、NAD⁺(ナイアシンから合成)も補酵素として必要とします。B2とB3が同時に存在して初めて、これらの酵素が機能します。
ビタミンB6:ビタミンB6を活性型(PLP)に変換する酵素がFMN依存です。B2が不足すると、B6も不足状態になる可能性があります。
拮抗・阻害する因子
アルコール(エタノール):腸管でのリボフラビン吸収を直接阻害し、肝臓でのFAD合成を妨げます。慢性的なアルコール摂取は、ビタミンB2欠乏のリスク因子です。
抗生物質:長期使用は腸内細菌によるリボフラビン合成を阻害します。特にテトラサイクリン系抗生物質は注意が必要です。
光(紫外線・可視光線):リボフラビンを急速に分解します。透明な容器に入れた牛乳を日光に当てると、2時間で50%以上が失われます。
まとめ
-
ビタミンB2はFADとFMNとして、エネルギー代謝の中心的な補酵素です。欠乏すると口角炎、舌炎、口内炎、皮膚炎、疲労感が起こりやすくなります。
実践のポイント:毎日納豆1パック、卵1個、牛乳200mlを食べることで、ほぼ1日分のビタミンB2を確保できます。レバーを週1-2回食べれば、さらに良いです。光を避けて保存し、茹で汁も利用することで、損失を最小化しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. ビタミンB2の1日の必要量は?
A. 成人男性で1.6mg/日、成人女性で1.2mg/日です。納豆1パック、卵1個、牛乳200mlでほぼ1日分を摂取できます。
Q2. ビタミンB2が不足するとどうなりますか?
A. 口角炎、舌炎、口内炎、脂漏性皮膚炎、眼の充血、疲労感などが起こります。エネルギー代謝が低下し、疲れやすくなります。
Q3. ビタミンB2を多く含む食品は?
A. レバー、納豆、卵、牛乳、ヨーグルト、アーモンドなどに豊富です。レバー50gで1日分以上を摂取できます。
Q4. ビタミンB2はサプリで摂るべきですか?
A. 通常の食事で十分摂取可能ですが、乳製品や卵を摂らない人、アルコール多飲者はサプリメント(5-10mg/日)での補給が有効です。
Q5. ビタミンB2は調理で失われますか?
A. 光に非常に弱く、日光に当てると急速に分解します。牛乳は紙パックで保存し、茹で汁も利用すると損失を最小化できます。
次に読むべき記事
分子栄養学で理解を深める
- 分子070 – ビタミンB1(チアミン):B2と協働するB1の役割を学ぶ
- 分子027 – TCAサイクルとエネルギー:FADがコハク酸脱水素酵素でどう働くかを解説
- 分子072 – ビタミンB3(ナイアシン):B2と協働するB3の役割を学ぶ
調理科学で実践する
- 調理003 – 脂溶性栄養素を守る調理法:栄養素を守る調理テクニック
- 調理065 – 疲労回復のための食事:ビタミンB群を活かしたエネルギー代謝最適化レシピ
